ピアノの弾きすぎで腱鞘炎になった..、ということを聞くことがありますが、実はピアノが原因で腱鞘炎になる人は非常に少なく、むしろ別の原因で腱鞘炎などの手の痛みのトラブルが多いことをご存じでしょうか?
手の痛みを訴える人は、男性よりも女性が多く、腱鞘炎も女性が多いと言われていますが、それは女性の方が家事など手を使うことが日常的に多いからです。しかし、今はそれだけでなく、スマホやパソコンでの手の使いすぎで、腱鞘炎やドケルバン症候群(親指が痛くなる病気)になる人が増えており、しかも年代は中高年世代だけでなく、10代や20代の若者、そして男性の間でも増えています。
手の痛みを感じたら、すぐに休ませることが重要です。初期の症状は通常、単なる筋肉疲労であることが多いので、湿布などを貼って、手を使わないようにすれば数日で治ることもあります。しかし、それを無視して手を使い続けると症状が進み、腱鞘炎などの病気になり、重症化してしまうと手術する羽目になってしまいます。
お仕事でどうしても手を使わなくてはならない場合は致し方ありませんが、それでももし、できることなら職場の方と相談して、治るまで手をあまり使わないような仕事にさせてもらうことができればベストだと思います。また、家事については、ご家族の方にできるだけ協力してもらうか、痛くない方の手を使って家事をするか、もし一人暮らしの場合は、治るまで外食やお弁当などを利用して、できるだけ包丁を持たないように工夫することが重要です。
しかし、40-50代の女性の場合は、手の使い過ぎが原因ではなく、更年期の関係でホルモンのバランスが崩れ、エストロゲンが減少する為に手に痛みを感じることが多くなるとも言われています。また、妊娠中や出産後にもこのような症状が現れることもあるそうですが、いずれにせよ、手に痛みや違和感を感じたら、手を使わないようにすることがベストです。
ピアノを長く続けたいのであれば、手はやはりいたわってあげないといけません。重症化して、ピアノが一生弾けなくなってしまってはもとも子もないですから、私は若い生徒さんでも中高年の生徒さんでも、パソコンやスマホの使い過ぎには注意するように伝えています。また、ピアノの初心者は手や指先にどうしても力を入れて弾く癖がある人もいる為、自宅で練習している時に手に違和感を感じたら練習をすぐに止めて休ませるように、と伝えています。
また、お子さんでも手に力を入れて鉛筆を持って字を書く子がいますが、このようなお子さんも将来、手に痛みを感じるリスクが高くなります。手に力を込めて字を書く人は、ピアノの演奏にもそれが現れますから、気を付ける必要があります。