ピアノの本当のスタートは中級レベルに入ってから

ピアノの習得においてよく勘違いされるのは、初級レベルが終わったら、基礎能力はついている、ということだ。

 

今では、子供の頃にピアノを習っていた大人の生徒さんがレッスンを再開するケースが増えており、当教室でもそのような生徒さんが在籍しているが、そのほとんどの大人の生徒さんは、子供の頃にバイエルレベル終了当りの初級から中級に差し掛かる頃にピアノを一旦、辞めてしまっている。子供の頃からピアノを習っていた為、全く習った経験のない大人の人に比べて、指は比較的動くものの、やはり基礎的なテクニックが不安定で、弾きたい曲が自由に弾ける状態にはなっていない。

 

一方で、チェルニー30番終了、40番レベル当り、つまり、上級に近いレベルになってから辞めてしまった人は、しばらく休んでも、かなり弾ける人がいる。これは、基礎テクニックが定着した状態だったので、しばらく休んでもさほど腕が落ちていなかったのだろうと推測する。

 

専門家の間でも言われているが、ピアノは初級レベルが終了してから、実は本当のスタートラインに立つことになる。ここから、基礎テクニック定着への本格的なレッスンに入る、まだ入り口に立ったばかりなのに、この当りから、生徒さんも中学生に入って忙しくなったり、受験などを機に辞めるケースが多いと聞く。この段階はまだテクニックもかなり不安定なのに、辞めてしまう、ということは、これまで何年もかけて払ったお月謝や時間が全てゼロになってしまうということだ。

 

その証拠に、初級レベルの生徒さんは、練習を2,3日サボると腕があっという間に落ちてしまい、元の状態に戻すのに時間がかかる。ということは、初級終了でレッスンを辞めてしまった時点で、これまで培ってきた基礎能力は坂を転げ落ちるように低下するということになる。

 

また、この段階で辞めてしまった大人の生徒さんの話を聞くと、子供の頃のようにスラスラ弾けなくなったと言う。そして、あの時、続けていれば良かった、と後悔するケースが多い。

 

初級終了のレベルは、とりあえずピアノの弾けるだけでの土台(基礎工事)がある程度できた段階なので、巷で出ているはやりの曲やディズニーやジブリなどのアニメの曲、また、学校のピアノの伴奏でさえも満足に弾けないレベルなのである。ほとんどのアニメの曲や、学校でのピアノ伴奏の曲は、そのほとんどが中級の中以上のレベルである。つまり、上級にほぼ達するレベルでないと、このレベルの曲が楽に弾けない、ということである。

 

今、ピアノを習っている人、これからピアノを習おうと考えている方には、是非、この点を考慮して頂きたいと思う。せっかく長い時間と多額のお金も投資してピアノを習われるのなら、是非、上級レベルを目指して頂きたい。勿論、高齢者の方の中には上級を目指すことが難しいので、そういう方達は例外として、特にこれから成長していく子供達、若い大人の方には留意して頂きたいと思う。ピアノは数年程度で習得できる楽器ではない、ということを。

2016年04月18日