生ピアノと電子ピアノの違いについて

最近の傾向として、両親共にピアノを習ったことがない、ピアノにも触れたことがない親御さんのお子さんがピアノに習いに来るケースが増えている。これは日本人、外国人に限ったことではありませんが、ピアノまたは電子ピアノを購入してくださいと伝えても、足台のないキーボードをピアノと勘違いをされる方もいらっしゃり、こちらも戸惑うことがあったため、ここで改めてお話したいと思います。

クラシックピアノを理解されていない方にとっては、鍵盤のあるものが全て「ピアノ」と思われている節があるようだが、多くのクラシック中心で教えているピアノの先生にとっての「ピアノ」というのは、あくまで生ピアノ(アコースティックピアノ)であり、それはアップライトピアノ(縦型ピアノ)とグランドピアノを指します。

きちんとしたクラッシックのレッスンを受けるのであれば、生ピアノが理想ですが、住宅事情や経済的理由などで電子ピアノもOKというお教室が多いと思います。当教室でも電子ピアノはOKとしていますが、上達に制限が生じることをお伝えしています。

素人では、生ピアノと電子ピアノの違いも理解できず、ましてやピアノを習ったことや弾いたことのない親御さんであれば、タッチの違いや音の違いさえも分からないかと思います。そこで今回は、素人にもできるだけ分かりやすく、生ピアノと電子ピアノとの違い、そして何故、電子ピアノでは上達に限界が生じるのかについてもお話したいと思います。

 

1.音を出す仕組みが根本的に違います

 

生ピアノ:まず、ピアノの鍵盤を押すと、その動きが内部のハンマーに伝わります。次に、そのハンマーが弦を叩きます。弦が振動すると、その振動が響板に伝わり、響板が音を増幅して部屋中に響き渡る音を生み出します。弦の長さや太さによって音の高さが変わります。


電子ピアノ:電子ピアノの音は、デジタル技術を使って生成されます。鍵盤を押すと、電子ピアノの内部にあるセンサーがその動きを検知します。この信号が電子回路に送られ、あらかじめ録音された本物のピアノの音(サンプリング音)が再生されます。つまり、これらの音は全て生のピアノの音に似せた電子音であり、この音はスピーカーから聞こえてきます。最近の高級モデルでは、鍵盤の重さやタッチの感触が生ピアノに似せて作られているものが出回っていますが、音の出す仕組みがそもそも違うため、完璧な生ピアノの音とは違います。


2.音質と音の響きが違います


生ピアノ:弾き方次第で音や音質が大きく変化し、汚い音や固い音も出せるため、上手下手が非常に表れやすくなります。従って、早いうちから綺麗な音を出す弾き方やテクニックが身に尽きます。しかも表現の幅が広いため、様々な美しい音色や微妙な音色の違い、その人にしか出せない独自の表現も可能になります。弦の振動と響板による自然な共鳴があり、音に深みと豊かさが生まれます。小さい音から大きい音までの幅広いダイナミクスを自然に表現できるため、クラシック曲の細かなニュアンスを忠実に再現できます。


電子ピアノ:電子ピアノの音はサンプリングされた音であるため、サンプリングされた音の範囲内でしか表現ができず、また、アコースティックピアノのような自然な響きがありません。従って、演奏技術による音色の違いが生ピアノと比べて出にくく、音がやや平坦になりがちです。多くの電子ピアノは音の大小や音色など、表現に限界があり、微細な音の変化や深みのある音が再現しにくいです。電子音に慣れると、生ピアノの微妙な音の変化が分からず、表現が一本調子になりやすくなります。

 

3.タッチと鍵盤の反応が違います


生ピアノ:生ピアノの鍵盤は、押すときに「ひっかかり」を感じます。これは鍵盤の動きが内部のハンマーと弦に直接つながっているためです。鍵盤をゆっくり押すと、最初に少し抵抗があり、その後にスムーズに下がる感触が伝わります。このひっかかりが、弾いているときに音の強弱や表現力をコントロールしやすくします。また、生ピアノの鍵盤は重さがあります。これは、ハンマーが弦を叩くための力が必要だからです。この重さとひっかかりのおかげで、細かいニュアンスをつけた演奏が可能になります。


電子ピアノ:電子ピアノの鍵盤も、生ピアノに似た感触を目指して作られていますが、仕組みが異なります。電子ピアノでは、鍵盤の動きがセンサーで感知され、その信号が音を出す仕組みになっています。高級な電子ピアノでは、生ピアノのような重さやひっかかりを再現するために、鍵盤の内部に重りや特別な機構が組み込まれています。しかし、完全に同じ感触にはなりません。電子ピアノの鍵盤は一般的にスムーズで、生ピアノほどの細かいひっかかりは感じられないことが多いです。そのため、微妙な音の強弱や表現力を出すのに限界が生じます。

 

また、電子ピアノは鍵盤が比較的軽い機種も多いため、ピアノを弾くのに必要な筋力や強い指がなかなか育たず、よほど自宅で注意して練習しない限り、指に力を入れて弾いたり、手や指などの形がおかしなままで弾く癖がつきやすく、修正するのが難しくなります。

 

4.ペダルの表現に違いがあります

 

生ピアノ:グランドピアノには3つのペダルがありますが、それらは内部の機構を動かして、弦の振動を調節したり、ダンパーを持ち上げたりします。この機械的な動きには一定の抵抗があり、そのためペダルを踏むときには適度な重さと手ごたえを感じます。この重さや感触は、ペダルの種類(ダンパーペダル、ソフトペダル、ソステヌートペダル)やピアノの設計によっても異なりますが、一般的にはしっかりとした重みがあります。


電子ピアノ:電子ピアノのペダルは、主に電子スイッチとして機能します。多くの電子ピアノでは、ペダルを踏むと内部のセンサーがその動きを感知し、対応する音響効果を発生させます。これらのペダルは生ピアノのような抵抗がないため、一般的に軽くて操作がしやすいです。従って、グランドピアノでレッスンをしているお教室に行くと、ペダルが重く感じられ、上手く踏めないことがよく起こります。

高級な電子ピアノでは、アコースティックピアノのペダルに近い重さや感触を再現するための機構が搭載されていることがあります。これにより、ペダルを踏む際の手ごたえや抵抗感が向上し、より生のピアノに近い演奏体験が得られるようですが、完全に生ピアノを再現しているわけではありません。

 

5. 音楽的な感受性に違いが生じます

 

生ピアノ:繊細な音の変化や音色の違いが出るため、音楽的な感受性を高めやすく、良い音や響き聴き分ける耳が育ちます。小さい時から音の微妙な変化を聴き分ける訓練を受けたお子さんは、表現力豊かな演奏をすることができるようになります。


電子ピアノ:音色や音の響きに制限があるため、音の微妙な変化を感じ取る能力が育ちにくくなります。従って、音楽的な感受性を高めるにはある程度の限界が生じます。

 

6. 練習環境に大きな違いが生じます

 

生ピアノ:グランドピアノを使用しているお教室の場合、レッスンで受けたことを自宅で再現することは可能です。レッスンで注意されたことが、自宅で修正することが可能です。但し、アップライトピアノの場合、上級レベルになると再現性が低くなり、物足りなく感じるようになるため、グランドピアノに移行される方が多いです。


電子ピアノ:音の出す仕組みや、鍵盤を押す時の力加減、ペダルの踏み方、表現力など様々な所で制限が生じるため、レッスンで受けたことを自宅で100%再現して練習することが難しくなり、曲が進めば進む程、修正に困難を伴うことが多くなります。表現力の幅が比較的狭い初級レベルでも、既に生ピアノとの違いを感じるお子さんがいます。特に、グランドピアノでレッスンをしているお教室で弾くと電子ピアノとのあまりの違いに戸惑い、曲が進むにつれて、自宅では上手く弾けたのに、レッスンでは上手く弾けなくなることが多くなります。

 

まとめ


以上の理由で、当教室では長くピアノを続けて欲しいと願うのであれば、より音楽表現の楽しみが生まれる生ピアノを使った方が、お子さんの技術的な向上や音楽的感性を高めるためにもベストです。家でどんな楽器を使うか、はお子さんの将来の可能性を左右することにもなりますので、可能であれば、音楽がしっかり出来る環境を整えてあげることが重要です。

 

ご家庭の事情で電子ピアノしか置けないご家庭については、定期的に音楽スタジオを借りたり、知り合いやお友達のお家でピアノを借りたり、または学校のピアノで練習することをお勧めしています。

 

2024年05月24日